「回収率がどんどん下がって行く」=「貸金業者の提案に応じているだけ」
主要貸金業者の回収率(返還率)は下がっていません。
ただ,高い回収率の維持には訴訟が不可欠となっています。
経営環境悪化に伴って貸金業者は,(特に提訴前に)提案する返還額をどんどん下げてきているので,貸金業者が提案する範囲で回収していると回収率は下がります。専門家の中には「どんどん回収率(返還率)が下がっていく」と説明するものもいますが,これは貸金業者の提案額で和解する回収作業をしているからです。主要貸金業者について「A社の返還率は○%」「B社の返還率は□%」などと業者毎にバラつきがある説明がされる場合,それはそれぞれの貸金業者がそれぞれの事情に応じて提案してくる金額で和解しているためです。そのため訴訟を避ける交渉中心の回収の場合は回収率は下がらざるをえなくなります。
しかし,貸金業者の提案に応じず訴訟中心の回収をすれば回収率は下がりません。各貸金業者はそれぞれの事情に応じて異なる割合の返還を提案してきますが,これを拒否して提訴し十分な回収作業をすれば,貸金業者の都合の良い提案で和解を強いられることを避けることができます。
なお,ここ数年,特にアイフルについて,他の事務所に相談に行きアイフルについては元本の30%~60%と回答されたということで当事務所へ相談に来られる方がいますが,元本の30~60%の回収に止まるのは訴訟をしないでアイフルの提案に応じてしまうからであり,訴訟をし確定判決を得れば現在でも利息を含めた全額の回収ができています。よって,本来あるべき回答は,「アイフルでも利息を含めた全額の回収ができます。ただし,判決を得る必要があります」となります。
もともと,過払い金返還請求は,一般事件と異なり「訴訟をしないと返還が早く,訴訟をすると返還が遅くなる」という傾向は当てはまらず,貸金業者の経営環境が良かった頃から,訴訟をした方が譲歩しなくて済み,かつ,かえって回収が早いという状況でした。
現在,かつてよりも訴訟に時間がかかるようになっていますが,一方で,貸金業者は予算の関係で訴訟をしない和解でも返還が遅く,早期解決のため提訴前に大幅な減額和解をするメリットはほとんどないと思われます。
そして,提訴せず大幅減額和解であればご本人でも十分にできるため,報酬を支払って専門家に依頼する意味はあまりないことになります。