同じではありません。
過払い金利息について「利息充当方式」か「利息非充当方式(棚上げ方式,別途積算方式)」かにより金額が変わります。「利息充当方式」の方が依頼者に有利であり,過払い金元本額自体が多くなり,裁判所は利息充当方式での金額が認めています。そのため専門家は当然利息充当方式を採用すべきですが,意外なことにすべての事務所が「利息充当方式」を採用しているものではありません。
当事務所は,依頼者に有利な計算方法である利息充当方式を採用しています。
(参考:依頼者に最も有利な計算方法_利息充当方式)
どうして不利な計算をする事務所が少なくないのか
他人から債権回収の依頼を受けた専門家であれば,当然依頼者のため最大限を請求して行くべきであり,裁判所で通常採用される計算方法であればそれを採用しない理由はありません。そのため,敢えて不利な計算を採用する事務所があるというのは,一般の方には不思議に感じると思います。しかし,不利な計算(無利息方式,利息非充当方式)を採用する事務所は少なくありません。
では,なぜ,わざわざ依頼者にとって不利な計算(=貸金業者に有利な計算)を採用するでしょうか。以下の理由が考えられます。
- 訴訟回避のため,貸金業者が応じる範囲で回収する方針
現在貸金業者は過払い金返還債務自体を争うことはほぼできないので,支払義務を否定する貸金業者はまずいません。各貸金業者は毎年予算を組んで,それぞれの経営事情に応じた和解基準を採用しています。ここで,貸金業者の和解基準は貸金業者に有利な計算(無利息方式又は利息非充当方式),すなわち依頼者に不利な計算による元本額が上限とされることがほとんどです。依頼者に有利な計算による金額を請求すると貸金業者側の和解基準を超えるので訴訟をする必要があります。
計算方法の違い,利息の有無で回収金額が大きく異なるので,訴訟をすべきですが,原則として訴訟をしない交渉回収を方針としていると,訴訟をせずに貸金業者と和解する必要があり,必然的に貸金業者側の基準に合わせて,依頼者に不利な計算方法を採用する必要が生じます。これは次に述べる事件処理の効率性を優先する方針とも密接に関係します。
また,司法書士は法律上,140万超の過払金の交渉・和解・訴訟代理ができないため,140万円を超えていると非弁行為とならないように書面作成代行という体裁で解決せざるを得ないという事情もあります。
- 事件処理の効率性維持を優先する方針
不利な計算をして回収金額が少なくなると報酬も少なくなるので,弁護士・司法書士にとっても不利な計算はメリットがないのではないかと考える方もいると思います。しかし,過払金返還請求では,1件毎の回収額にこだわるよりも,大量に受任してできるだけ手間をかけず効率よく解決していく方が事務所の利益が大きくなります。現在,過払い金返還請求については報酬規制があり,上限が低く抑えられているため,訴訟に手間をかけていると利益が少なくなります。 短期間で効率よく事件を処理しようとすると,貸金業者が応じる範囲での和解を方針とする必要が生じます。
主要貸金業者は,現在でも,最も有利な計算方法(利息充当方式)による過払金元本と返還日までの過払金利息の回収ができますが,貸金業者毎に返還率にばらつきのある説明がある場合,それは各貸金業者の和解基準に従った解決をしているからであり,貸金業者側に有利な計算方法を採用している可能性が高くなります。
最も有利な計算による金額を依頼者に知らせないという問題
最も有利な計算方法(利息充当方式)は裁判で問題なく採用されます。にもかかわらず,敢えて不利な計算(無利息方式・利息非充当方式)で計算し,その額しか依頼者に知らせないという問題があります。計算方式の違いによる金額の差は一般の方が考えているほど小さくありません。
不利な計算で過払金の額は100万円と伝えられ,その額又は9割ならすぐに和解できるとの説明で和解したとします。一見よい和解のように思えますが,裁判で問題なく認められる有利な計算による金額が150万円であれば,知らないところで大幅な債権放棄をしたことになります。依頼者に誠実であろうとすれば,不利な計算方法による金額しか知らせないという選択はあり得ないはずです。貸金業者が応じる範囲での効率よい解決をしようとすると,回収可能な有利な計算による金額を知らせない方が好都合という事情が窺えます。