基本的な考え方
原則として,破産手続は管財人が選任される管財手続が原則であり,同時廃止が例外であるというのが本来の考え方です。裁判所はこの考え方に基づいて事件を振り分けてます。数年前は,破産事件全体のうち,同時廃止事件の方が管財事件よりも多い状況でしたが,現在は弁護士が代理人として申し立て簡易迅速に処理を行う少額管財事件の体制が十分に整い,また,より中立・公平性を保てることから,少額管財手続の方が多くなっています(東京地裁の場合)。
【破産手続の分類】
考え方 | 管財人選任の有無 | 管財手続の種類 | 予納金※1 | 補足 |
原則 | 管財事件 | 通常管財事件 | 50万円 | 本人申立(司法書士申立代行)の場合 |
少額管財事件 | 20万円 | 弁護士が代理人となり申し立てた場合 | ||
例外 | 同時廃止事件 | - | -※2 | ※3 |
※1 管財人報酬として納める最低額です。原則申立時一括ですが,生活状況により4回分割納付ができます(東京地裁)。このほかに官報公告費用の予納が必要です)
※2 同時廃止でも官報公告費用の予納が必要です。
※3 同時廃止を希望して申し立てても,裁判所の判断で管財事件とされる場合があります。
管財事件と同時廃止事件の振り分け
主に以下の場合などには破産管財人を選任する手続(少額管財手続)となります。よって,以下の事由に該当しなければ同時廃止事件となります。なお,少額管財手続は,弁護士が代理人として申し立てた場合にのみ利用できます。
- 換価対象となる一定の資産がある場合
- 不動産を所有している場合
住宅ローンの残高が時価の1.5倍を超える場合には同時廃止手続が可能です(不動産は住宅ローン債権者の抵当権実行などの処分に委ねられます)。 - 事業者(又は元事業者)である場合
- 負債額多額など資産調査が必要な場合
- 偏波弁済があり管財人による否認権行使の可能性がある場合
破産申立準備に着手後に一部債権者へ返済しその額が20万円以上の場合など - 免責不許可事由があり裁量免責するか調査が必要な場合
少額管財手続,同時廃止手続のいずれかで申し立てをしますが,同時廃止手続を希望して申し立てても,裁判所が同時廃止手続は不相当と判断した場合に少額管財手続となることがあります。