自己破産とは
自己破産とは,債務者自ら申し立てて破産決定を受け,資産は換価して債権者に配当し,残った債務については免責を得る一連の裁判手続のことをいいます。裁判手続により強制的に債務整理する方法です。
適する方
自己破産は次のような方に適しています。
- 任意整理・民事再生で返済可能な額まで債務が減る見込みがない場合
(減らなかった方や債権者が和解を拒否した場合を含む) - 処分される一定以上の資産がない場合
(又は処分されてもよいと考えている方) - 債務の免責を受けて一からやり直したい場合
- 免責不許可事由がない,または裁量免責の見込みがある場合
メリット・デメリット
メリット
債務の免責を受けられる(税金・罰金等一部債務を除きます)
デメリット
- 一定以上の資産は処分される。
生活を維持するために必要な最低限の資産は維持できます。 - 信用情報登録に登録され,一定期間借入ができなくなります。
- 警備員・士業など,免責までの間,資格に制限が生じる。
- 免責決定確定後,7年間はもう一度免責を受けることはできない。
注意点
以下の点に注意が必要です。
- 税金・罰金等の一部債務は免責されない。
- 保証人の責任には影響がおよばない。
保証人へ請求が行きます 。 - すべての財産が処分されるのではない。
生活維持に必要な最低限の財産は残ります。 - 一部債権の除外はできない。
- 司法書士は代理できない。
司法書士の申立代行の場合,即日面接制度・少額管財手続が利用できず,管財事件の予納金が高くなります。
手続の種類
自己破産の手続には以下の3つに分かれます。
- 同時廃止事件(破産管財人が選任されない手続)
- 少額管財事件(弁護士が申立代理した事件で管財人選任される手続)
- 通常管財事件(少額管財事件に該当しない破産管財人が選任される手続)
同時廃止事件(1):破産管財人が選任される管財事件が原則ですが,換価の対象となる一定以上の資産がなく,かつ破産管財人の調査が不要な場合には,破産管財人は選任されず破産手続開始と同時に手続を終了させる同時廃止が行われます。弁護士が代理する場合,即日面接制度により1回だけ弁護士と一緒に裁判所へ行けば足ります。本人申立てや司法書士が申立を代行した場合には即日面接制度は利用できないので弁護士へ依頼することをお勧めします。
少額管財事件(2):管財手続には通常管財事件と少額管財事件に分かれます。少額管財事件とは弁護士が申立代理人となって事前に債権債務調査を行って申し立てに,通常の管財事件よりも低額の費用で簡易な手続が行われる管財事件です。申立時の予納金の最低額は原則20万円です。
通常管財事件(3):本人申立や司法書士の申立代行の場合で管財人が選任される手続です。破産管財人報酬として最低50万円を予納する必要があります 本人申立てや司法書士が申立代行した場合には予納金が高くなるため,弁護士へ依頼することをお勧めします。
少額管財事件
少額管財事件になる主な場合は次のとおりです。
①換価対象となる一定以上の資産がある場合
33万円以上の現金がある場合,20 万円以上の預貯金・保険の解約返戻金,時価が20万円を超える財産があるは原則として少額管財事件になります(東京地裁)。
一定以上の資産があれば少額管財事件になりますが,その一定以上の資産全てが配当に回されるという訳ではありません。破産法上換価対象とされない財産や裁判所の運用で原則として換価しない財産は手元に残すことができます。たとえば,150万円の現金がある場合,20万円以上の現金があるので少額管財事件になりますが,99万円までは自由財産に出来るので,配当に回されるのは99万円を超える部分になります。少額管財事件になるかどうかという基準と実際に換価する必要があるかという基準は違うのです。
また,家財道具等も原則として処分されません。
さらに,不動産を所有していても,その不動産に抵当権が設定された住宅ローンの残額が不動産の時価の1.5倍以上の場合には,同時廃止を申し立てることが出来ます。
なお,パソコンや車・バイクなどについてはローン会社にローン完済まで所有権が留保されている場合があるので,その場合,時価にかかわらず,原則として,物品をローン会社に返還しなければなりません。所有権留保がついているかどうかは契約書に記載されています。分からなければローン会社に問い合わせるのがよいでしょう。
②免責させて良いか調査する必要がある場合
ギャンブルや浪費など免責不許可事由がある場合などがこの場合に当たります。
ただし,おそらく多重債務者の方は多かれ少なかれ浪費はした部分はあると思います。ここでいう浪費は程度を越えたものと捉えて良いと思います。
③財産を取り戻す必要がある場合
過払い金や一部の債権者にのみに偏った弁済をしていた場合などがこの場合に当たります。
ただし,過払い金がある場合には申立前に回収すれば弁護士費用・申立費用に充てることがでます。
ご相談時にお聞きした内容から同時廃止となるか少額管財事件となるかの見込みを付けることができます。しかし,同時廃止予定で着手した後に明らかとなった事情によっては少額管財事件になる場合があります。たとえば,調べてみたところ,20万円以上の解約返戻金があると判明した場合や,見込みの退職金額の8分の1の額が20万円を超えていた場合,所有している車などの財産の時価が予想外に高かった場合,過払い金が多く回収できた場合などです。
調べてみると免責不許可事由に該当する事実が判明した場合も同様です。
そのため,ご相談の際には,全ての事情をできるだけ正確に伝えることが重要です。