Yageta Law Office

住宅宿泊事業法

Vacation Rental

住宅宿泊事業(民泊新法)のご相談

平成29年6月9日,住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立しました。

公布日(平成26年6月16日公布)から1年を超えない範囲で政令で定める日から施行するとされており(附則1条),政府は,平成30年1月の施行を目指すとしています。

住宅宿泊事業(民泊)が施行されれば,住宅宿泊事業者,住宅宿泊管理業者,住宅宿泊仲介業者,宿泊者,近隣住民との間で様々な問題が生じると予想されます。

また違法な民泊への取り締まりが強くなると予想されます。

住宅宿泊管理業(民泊代行業)・住宅宿泊事業(民泊事業)のご相談承ります。

News

事業として考えるなら何より「適法性」

現在,旅館業法に違反する違法民泊が横行しています。民泊新法の制定の狙いは,適切な監督が及ばない違法民泊をなくすことにもあります。

民泊新法では,種々の罰則が設けられています。(住宅宿泊事業法の罰則を整理

新法施行後は,違法民泊に対する取り締まりは強くなると予想されます。

違法民泊は,事業を続ける上で,民泊事業者だけでなく,代行(管理)業者,仲介業者にとっても,大きなリスクとなります。

継続可能な事業として,民泊事業・管理業(代行業)・仲介業を行うのであれば,なにより法令遵守,適法性が重要です。

また,民泊は,住宅の所有者・賃借人,代行(管理)業者,仲介業者,宿泊者,近隣住民など複数の者が関係し,それぞれの間に様々な法律問題が生じます。

現に,大阪市内で違法に民泊を営業しているマンション所有者ら5名がマンション管理組合から総額3267万円の損害賠償請求訴訟を提起されています(毎日新聞H29.8.3)。

事業の適法性を確保してトラブルを未然に防ぐため顧問弁護士が必要です。

住宅宿泊(民泊)事業・管理業(代行業)・仲介業のための顧問契約を承ります。

年180日規制の実効性を確保できるか?

実効性のない規制ほど有害なものはない

民泊新法で認められる住宅宿泊事業には,年間宿泊日数180日以内という規制がありますが,この規制に実効性はあるか疑問があります。

現在旅館業法に違反した違法民泊が横行しています。民泊新法の施行により,すべての民泊営業が,旅館業法の簡易宿所営業許可を得た民泊営業か,民泊新法に基づく住宅宿泊事業,その他特別法による民泊営業のいずれかになるのであれば問題はありません。

しかし,違法民泊が横行しているのは旅館業法による規制に実効性がないからです。民泊新法の年180日規制も実効性がなければ,結局は,180日を超える違法民泊が横行することになります。

ここで,問題なのは「実効性のない規制ほど有害なものはない」ということです。

遵法意識のある者は,ばれなくても規制を守ります。これに対して,遵法意識のない者は,ばれなければ規制は守りません。規制を守らない方が多く利益を上がられるので,規制を守る者と守らない者では競争になりません。年180日では採算がとれず市場から規制を守る事業者が退場していけば,結局,正直者が馬鹿を見て,市場は,規制を守らない事業者の独壇場になるおそれがあります。

そうなると,180日規制は,遵法意識のあるまじめな事業者を市場から排除するだけの規制になりかねません。

民泊新法(住宅宿泊事業法)がその理念を実現するためには,180日規制のルールの実効性を確保することが重要になります。

官民協力して違法民泊を駆逐していく必要があります。

仲介サイト最大手Arbnbが登録情報を都道府県へ提供へ

民泊仲介サイト世界最大手のAirbnb(エアビーアンドビー,米国)は,民泊新法の成立を受け,違法民泊を排除するため,新規に民泊業者をサイト登録する際に,登録情報を都道府県に提供する方針であると報じられています(毎日新聞H29.6.25)。

民泊新法では,住宅宿泊事業について都道府県への届出制(3条1項)を,旅館業法は,旅館業について都道府県の認可制(旅館業法3条1項)を採用しています。そのため,仲介業者から都道府県へ登録情報が提供されることには,違法民泊業者を排除する実効的な効果を期待できます。

外国人観光客がターゲットに

民泊新法は,「国内外からの観光旅客の来訪及び滞在の促進並びに国民経済の発展」を目標・効果としています。その背景には,訪日外国人旅行者数が836万人(2012年)から4000万人(2020年)へ,地方部(三大都市圏以外)での外国人延べ宿泊人数が855万人(2012年)から7000万人(2020年)に増加することが見込まれており,宿泊需要に供給が追いつかない状態になると予想されているからです。

そのため,民泊新法は,外国人観光客が住宅宿泊サービスの提供を受ける「宿泊者」の中心となることを念頭に置いており,そのため,新法では「外国人観光客(宿泊者)に対して住宅設備の使用方法に関する外国語を用いた案内や移動のための交通手段に関する外国語を用いた情報提供」など省令で定める外国人観光客(宿泊者)の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置をとらなければならないとされ(7条),外国語を用いて,周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明をしなければならないとされています(9条2項)。

外国人観光客を前提とした事業計画が必要

民泊では,住民が生活する区域・隣家に宿泊することになりますが,外国人観光客は,日本の生活様式・習慣・当該地域の特性等を知らないため,住民とのトラブルが生じる恐れがあります。

外国人観光客とのトラブルが多発すると「国内外からの観光旅客の来訪及び滞在の促進並びに国民経済の発展」の目標・効果を達成できなくなりますし。また,外国人観光客に日本滞在を十分に楽しんでもらい,日本の良さを知ってもらうためにも外国人観光客と地域住民とのトラブルを防止する必要があります。

そのため,住宅宿泊事業・住宅宿泊管理業・住宅宿泊仲介業への参入を考えている個人・企業は,外国人観光客が主たる「宿泊者」になることを前提して準備する必要があります。

外国人旅行者受入数ランキング※観光庁(2016.10.19)

世界1位はフランス(8445万2000人),日本は16位(1973万700人)

アジア1位は中国(5688万6000人),日本は5位。

国籍別の訪日者数

日本政府観光局の推計値によると,2017年1月~7月の訪日外国人旅行者を国籍別で見ると,上位から,中国(406万2500人),韓国(403万9900人),台湾(255万2816人),香港(131万8000人)となっており,これらのみで,全体1643万8800人の約74%を占めています(5位に米国(82万5900人)。
※ 訪日外国人旅行者=国籍に基づく法務省集計による外国人正規入国者数から日本に居住する外国人を除き、これに外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者

民泊新法で何ができるようになる?

  • 「旅館業の営業者以外の者」が,
  • 「宿泊料」を受けて,
  • 「住宅」に,
  • 「人を宿泊させる事業」を
  • 「宿泊日数年180日」を上限にして
  • 営むことができるようになります。

「旅館業の営業者以外の者」とは?

宿泊料を受けて人を宿泊させる事業(宿泊営業)は,許可を受けた「旅館業の営業者」のみができます(旅館業法3条)

民泊新法では,「旅館業の営業者」以外の者が一定の要件のもとで宿泊事業をできるようになります(新法3条)

※以下,新法については条文番号のみ記します。

「宿泊料」とは?

「宿泊料」は,旅館業法上の「宿泊料」と同義で,「休憩料」「室内清掃費」など名目の如何を問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものが含まれます。

「住宅」とは?

「住宅」とは,次のいずれの要件にも該当する家屋です(2条)。

  1. 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること
  2. 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること

この2つの要件のいずれにも該当する必要があり,いずれかに該当するだけでは足りません。

1の目の要件は,条文に挙げられた台所等の設備だけでなく,国交省令・厚労省令で定める「生活の本拠として使用するために必要な設備」が設けられている必要があります。なお,家屋単位で設備が備わっていれば足りるので,家主居住型(ホームステイ型)のように宿泊者が現に寝泊まりする部屋にこれらの設備がすべて備わっている必要はないことになります。

2つ目の要件では,国交省令・厚労省令でさだめる「人の居住の用に供されていると認められるもの」に該当する必要があります。そのため,長期間放置して居住に適さない状態になっている空き家は含まれないことになります。

この2つの要件に該当すれば,「住宅」として民泊新法で宿泊の用に供する家屋(届出住宅)とすることができます。旅館業法で求められている構造設備基準や衛生基準を満たしている必要はありません。さらに,旅行業法上の学校等の周囲100メートル区域内に設置する場合の規制にもかかりません。
 ただし,これらに代わり,民泊新法上,床面積に応じた宿泊者数の制限,定期的な清掃や非常照明用器具の設置などの義務が課されることになります。床面積に応じた宿泊者の制限については,簡易宿所営業並の床面積基準(1人あたり3.3㎡以上)が予定されています。1人あたり1坪(2畳)以上は必要ということです。

「人を宿泊させる事業」とは?

「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」です。旅館業法上の「宿泊」と同義です。

ここで,「生活の本拠としてその家屋を利用させること」は,「賃貸」であり「宿泊」に該当しません。生活の本拠として家屋を利用させることは「宿泊」ではなく「賃貸」になります。

「宿泊」か「賃貸」かは,契約名や料金名ではなく,その実質で区別され,いずれに該当するかで適用される法令が異なります。
 宿泊事業は,民泊新法・旅館業法・旅行業法等が適用され,賃貸事業には,借地借家法・宅地建物取引業等が適用されます。住宅宿泊事業は賃貸ではないので,その仲介は,不動産仲介業者は扱えず,旅行業者と民泊新法で新設される住宅宿泊仲介業者のみが扱えることになります。

なお,国家戦略特別区域法に基づく国家戦略特別区域で認められる「特区民泊」(国家戦略特別外国人滞在施設経営事業)は,民泊新法の住宅宿泊事業とは別物です。特区民泊は,あくまで賃貸借契約に基づき利用させるものです(同法13条1項)。そのため,不動産賃貸業として扱われます(ただし,旅館業に該当する部分を含むため旅館業法の適用が除外されています(同条4項)。

「住宅宿泊事業」年180日までの事業

民泊新法は,旅館業の営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業を営むことができるようする法律です。しかし,旅館業の営業者は,1年365日,宿泊日数に制限はありませんが,民泊新法で認められるのは宿泊日数が1年間で180日を超えない宿泊事業とされ,宿泊日数に制限が設けられています。民泊新法は,あくまで,家屋がなおも住宅として扱い得る範囲にとどまることを予定しているからです。宿泊日数の算定方法は,国交省令・厚労省令で定めるとされています。(2条3項)

民泊新法は,旅館業法の例外として,旅館業の営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業のうち宿泊日数が年180日を超えないものを「住宅宿泊事業」として認めるものです。

年間180日を超える事業は,そもそも民泊新法が認める「住宅宿泊事業」に該当しません。無許可で営業すると旅館業の無許可営業になり,刑事処分の対象になります(旅館業法10条)。

宿泊日数に下限・上限はない

民泊新法では,宿泊者が1回に利用する宿泊日数について下限も上限も定められていません。この点は,国家戦略特別区域法の「特区民泊」では,2泊3日から9泊10日までの範囲で条例で定める期間以上の宿泊が必要とされている点と異なります(同法施行令12条2号)。

条例による住宅宿泊事業の実施の制限

住宅宿泊事業は宿泊日数年180日の上限があるのみで,実施時期に制限はありません。ただし,都道府県(住宅宿泊事業等関係行政事務を処理する保健所設置市等の区域にあっては、当該保健所設置市等)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができます(18条)。

制限する理由と限度

条例による期間制限は,あくまで住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときに限定され,かつ,合理的に必要と認められる限度ですることができます。
 例えば,地域のホテル・旅館の保護を目的とした制限はできないことになります。

届出で住宅宿泊事業ができる

都道府県知事又は住宅宿泊事業の事務処理を希望する保健所設置市又は特別区においてはその長へ届出をすることで,住宅宿泊事業を営むことができます。特別な資格・免許は不要です。

この届け出た住宅を,民泊新法では「届出住宅」といいます。

新法施行日前から届出を受付け予定

住宅宿泊事業法は,公布日(H29.6.16)から1年以内に施行されることになっていますが(附則1条),準備行為として,公布日から9ヶ月以内で政令で定める日から届出ができ,準備行為として届出ておくと,新法施行日に届出がされたとみなされます(附則1条,2条2項)

どこで営業できる?

旅館業法ではホテル等の宿泊施設の設置場所に規制があります(旅館業法3条3項)。これに対して,民泊新法上は,既存の住宅を宿泊施設にするため,設置場所に制限がありません。

また,これまで許可を得て旅館業法上の「簡易宿所営業」として民泊営業を行うことが可能でしたが,建築基準法上の用途は「ホテル・旅館」に該当するため,用途が「住宅」や「共同住宅」の家屋を使用する場合,建築確認や用途変更の手続が必要となることがありました。

さらに,都市計画法の用途地域の中には,建築基準法上,「ホテル・旅館」を用途とする建築物を建築できない用途地域がありました。例えば,第1種低層住宅専用地域内には「住宅」「共同住宅」は建築できますが,「ホテル・旅館」は建築できません(建築基準法48条1項)。そのため,このような用途地域で民泊営業を行うことはできませんでした。

しかし,民泊新法では,住宅宿泊事業に使用する「届出住宅」は,建築基準法上,「住宅」「長屋」「共同住宅」「寄宿舎」に含まれるものとされ(21条),都市計画法・建築基準法上の問題の解決が図られています。これにより,例えば,用途が「住宅」「共同住宅」になっている家屋を住宅宿泊事業の届出住宅に使用しても,用途は「住宅」「共同住宅」のままで用途の変更はないことになります。

   

トラブル回避のため,マンション管理規約で可否の明記を

国土交通省が公表しているマンション標準管理規約では「区分所有者は,その専有部分を専ら住宅として使用するものとし,他の用途に供してはならない」という住居専用規定が定められており(同規約12条),多くのマンションがこの標準規約をベースにした規約を置いていると考えられます。では,住宅宿泊事業を行うことは,住居専用規定違反になるでしょうか。

まず,民泊新法(住宅宿泊事業法)は,宿泊サービスに提供される住宅が,住宅として扱える範囲にとどまるように制度設計されています(観光庁・厚生労働省「民泊サービスのあり方に関する検討会最終報告書」)。そして,国土交通省は,民泊新法を受けたマンション標準管理規約の改正に関する「パブリックコメントにおける主な意見と国土交通省の考え方」(H29.8.29)において,住宅宿泊事業の届出の際に民泊を禁止する旨の管理規約などがない旨を確認したいと考えている,可否が明確に規定されていない場合は禁止する方針が決定されていないことを確認する予定としていると述べており,規約で認めているかよりも,禁止しているかどうかに注目しています。これらからすると,国土交通省は,住宅宿泊事業を行うことが,ただちに住居専用規定に違反するとは考えていないようです。これに対して,国土交通省は,旅館業法の簡易宿所の許可を得て行う民泊は,通常,住宅専用規定に違反すると考えられるとしています。

ここで,国土交通省は,住居専用規定について,「専ら居住者の生活の本拠があるか否かにより判断する。したがって,利用方法は,生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する。」とコメントを付しています。そのため,「専ら住宅として使用する」とは,自ら住居として住む必要はないまでも「専有部分の利用方法について,それが専ら日常的な寝食のための居住用建物としての平穏さが確保されるべきものであることを意味すると解されます(稲本洋之助・鎌野邦樹編「コンメンタール マンション標準管理規約」第1版52頁以下)。

居住用建物としての平穏さが重要な要素であれば,住宅宿泊事業に使用することだけで,直ちに,住居専用規定に違反するとまでは言えなくとも,実際の営業態様によっては,住居専用規定に反する可能性は残ります。

住宅宿泊事業の可否が明記されていないマンションでは,他の住民と住宅宿泊事業者との間で,規約違反を巡り,トラブルが発生する可能性は大いにあります。そのため,マンション住民間のトラブルを避けるため,管理規約に民泊の可否と条件を明記することが望まれます。

更に,これから分譲するマンションについては,民泊営業の可否を明らかにして分譲する必要があるでしょう。 

マンション標準管理規約の改正(国土交通省)

国土交通省は,平成29年8月29日,住宅宿泊事業法成立を踏まえ,分譲マンションにおける住宅宿泊事業の実施を可能にする場合・禁止する場合の規定例を示す「マンション標準管理規約」の改正を行いました。

住宅宿泊事業の実施を可能にする場合の規定例,禁止する場合の規定例等が,「単棟型」「団地型」「複合用途型」に分けて例示されています。

基本的にはこの規定例どおりの改正で足り,必要に応じて修正することになります。

なお,禁止する場合は,住宅宿泊事業を含め広く「区分所有者は,その専有部分を,宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない」と定めることもありえるとコメントが付されています。

 

パブリックコメントにおける主な意見と国土交通省の考え方

国土交通省は,民泊新法施行へ対応するマンション標準管理規約の改正(案)に関して,H29.6.19~H19.7.18まで意見募集を行い,H29.8.29,提出された主な意見とこれに対する同省の考え方を公表しました。

その中で,国土交通省は,トラブル回避のため民泊を認めるか否かマンション管理規約上明確にしておくことが望ましいとしています。そのため,同省は,住宅宿泊事業の届出(新法3条1項)の際に,民泊を禁止する旨の管理規約等がない旨を確認したいと考えており,規約上,許否が明確に規定されていない場合でも,組合として禁止する方針にないことを確認する予定であるとしています。

宿泊拒否制限規定はない

営業者が宿泊者の宿泊を拒否できるかという点について,旅館業法の適用があるホテル等では,宿泊拒否を制限する規定があり,伝染性の疾患にかかっていることが明かな場合など法律・条例で定められた宿泊拒否事由がない限り,宿泊を拒むことができません(旅館業法5条)。

これに対して,住宅宿泊事業では,このような宿泊拒否を制限する規定はありません。そのため,宿泊申込みに応じるか否かは,住宅宿泊事業者が自由に決めることができます。

ただし,差別的な理由による宿泊許否は問題になります。

仲介サイト世界最大手が人種差別根絶を目指す

民泊仲介サイト世界最大手のArbnb(米国)は,民泊仲介サイトを運営しているが,ホスト(民泊事業者)が旅行者の人種を理由に宿泊を拒否したり,有色人種のホストの宿泊施設が不人気となる問題が存在しており,ホストと旅行者双方に人種差別をしないことを誓約させるように全国有色人種地位向上協議会(NAACP)とパートナーシップを樹立し,俳優のダニエル・グロバーをアドバイザーとして起用しました(USAトゥデイ紙)。

「住宅宿泊管理業者」への委託義務

「住宅宿泊管理業者」とは,住宅宿泊事業者から委託を受け,報酬を得て,住宅宿泊事業者に代わって業務を行い,また,住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務(住宅宿泊管理業)を行う者です(2条7号)。

住宅宿泊管理業は,住宅宿泊管理業者しか行うことができません。

住宅宿泊管理業を行うには,国土交通大臣の登録を受ける必要があります(22条1項)。

1つの管理業者への委託の強制

ホテルなどの「旅館業の営業者」は,規模にかかわらず,自ら宿泊設備を管理することができますが,住宅宿泊事業者は,次のいずれかに該当するときは,住宅宿泊管理業者へ管理業務を委託する義務があります(11条)。

  1. 届出住宅の居室の数が国交省令・厚労省令で定める「一定の数」を超えるとき
  2. 届出住宅に人を宿泊させる間,不在になるとき(家主不在型)

大部分の住宅宿泊事業者が上記のいずれかに該当することになると予想されます。

複数の管理業者への委託はできない

委託は1つの住宅宿泊管理業者へ委託する必要があります。届出住宅について複数の住宅宿泊管理業者へ委託することはできません。

例外

管理委託が強制されるのは,住宅宿泊事業者として個人が予定されているため,住宅宿泊事業者自身による適切な管理が必ずしも期待できないためであるからと解されます。そのため,住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者であり,自ら管理するときは,適切な管理が期待できるので,住宅宿泊管理業者への委託義務はありません(11条1項1号)。そのため,住宅宿泊管理業者が,所有者から住宅を賃貸借して,自ら住宅宿泊事業者として,住宅宿事業を営むこともできます。

1について,家主居住型で,かつ,居室の「一定の数」を超えなけば,委託する義務はありません。「一定の数」は,住宅宿泊事業者が一人で各居室の管理業務を全部行っても適切な実施に支障が生じるおそれがない数が定められます(同号)。

2の家主不在型については,普段は家主が使用していても宿泊させる間不在になるのであれば該当しますが,「一時的な不在」や「届出住宅と家主の自宅との距離等その他を勘案し,管理業務を委託しなくても適切な実施に支障を生じる恐れがない場合」は除かれます(同条2号括弧書)。

委託するメリット-事業者の義務の免除

委託義務がある場合に住宅宿泊管理業者に委託すると,住宅宿泊事業者が負う以下の義務は,住宅宿泊管理業者が負うことになり,住宅宿泊事業者は義務を免除されます(11条2項)。

一般の管理委託の場合,管理業者は事業者の管理義務の履行補助者であり,事業者は管理義務を免れません。しかし,民泊新法では,住宅宿泊管理業者に委託した場合,以下の義務を負うのは,住宅宿泊管理業者であり,住宅宿泊事業者ではなくなります。

  • 宿泊者の衛生の確保(5条)
  • 宿泊者の安全の確保(6条)
  • 外国人観光客である宿泊者の快適性及び利便性の確保(7条)
  • 宿泊者名簿の備付け等(8条)
  • 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に監視必要な事項の説明(9条)
  • 苦情への対応(10条)

民泊では,住宅宿泊管理業者の役割が重要

多くの住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者へ委託することになると考えられます。そのため,住宅宿泊事業における住宅宿泊事業管理者の役割は重要であり,住宅宿泊事業の実際の担い手として機能すると考えられ,民泊の成否は,住宅宿泊事業管理者にかかっているということができます。

「住宅宿泊仲介業者」への委託

「住宅宿泊仲介業者」とは,旅行業者以外の者で,報酬を得て,宿泊者のための宿泊サービス提供契約の代理・媒介・取次ぎ,住宅宿泊事業者のための宿泊サービス提供契約の代理・媒介を行う事業(住宅宿泊仲介業)を営む者です(2条9号)。

住宅宿泊仲介業を営むには,観光庁長官の登録を受ける必要があります(46条1項)。

※「宿泊サービス提供契約」=宿泊に対する届出住宅における宿泊のサービス提供にかかる契約

宿泊サービス契約締結の代理等は,これまで旅行業者(旅行業法6条の4第1項)のみが営むことができましたが,民泊新法では,住宅宿泊仲介業専門の仲介業者として,住宅宿泊仲介業者を設けました。旅行業者も住宅宿泊仲介業者も観光庁長官の登録が必要であり,観光庁の監督下にあります。

住宅宿泊管理業は,住宅宿泊管理業者だけが行えますが,住宅宿泊仲介業は,旅行業者も扱うことができるので,住宅宿泊業専門の仲介業者という立場になります。

仲介の委託

住宅宿泊事業者は,宿泊サービス提供契約の締結の代理・媒介を他人に委託するときは,住宅宿泊仲介業者又は旅行業者のいずれかに委託しなければなりません(12条)。

委託は任意

かならず住宅宿泊仲介業者へ仲介を委託しなければならないものではありません。住宅宿泊事業者が自分で宿泊者を募集し,直接,宿泊者と宿泊サービス提供契約を締結することはできます。ただ,実際には,多くの住宅宿泊事業者については,みずからこれを行うことは難しいと考えられるので,住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託することになると考えられます。

住宅宿泊管理業者が仲介の委託や宿泊者募集をすることはできない

住宅宿泊管理業務に仲介の委託や宿泊者の募集は含まれていないので,住宅宿泊業務の委託を受けた住宅宿泊管理業者が,住宅宿泊事業者に代わって住宅仲介業者へ仲介の委託を行うことはできません。また,住宅宿泊管理業者が,住宅宿泊事業者に代わって宿泊者を募集することもできません。あくまで,住宅宿泊事業者が,自ら募集するか,住宅宿泊仲介業者に委託する必要があります。

複数の仲介業者へ委託は可能

住宅宿泊業務の委託は複数の住宅宿泊管理業者へ委託することはできませんが,仲介については,法律上は,複数の住宅宿泊仲介業者への委託ができます。専属専任媒介にするかは個々の仲介業者との契約によります。