大きく異なります。
各弁護士・司法書士はそれぞれの考え方に基づいた方針により回収作業をしますが,例えば,訴訟中心の回収か,交渉中心の回収かという点だけで大幅に違いが出ます。
現在は提訴しない方が返還時期は大幅に早いという状況にはありません。
仮に提訴した場合と提訴しない場合の回収時期に数ヶ月の差があるとしても,この超低金利時代に,その数ヶ月の差のために,例えば提訴すれば100万円の回収見込みがあるところ70万円で和解することを選択する人は少ないと思います。提訴しないで早期解決名目で減額和解をするのは,1件毎の十分な回収よりも,全体としての回収効率を重視しているに過ぎないと思われます(なお,司法書士の場合,訴訟代理権に制限があるため訴訟ができない事情が加わります)。
弁護士・司法書士はそれぞれの考えに基づいてそれぞれの方針があります。ご自身の希望に添う方針かどうかを確認してから依頼することが重要です。
大きな差が出てしまう理由
事務所毎に回収額や,回収率(返還率)に差が出る主な理由として,次の点が挙げられます。
- 計算方法の違い
過払金の計算方法には,大きく,過払金利息を付ける有利息方式と過払金利息を付けない無利息方式があり,有利息方式は,さらに利息充当方式と利息非充当方式に分かれます。過払金額が大きくなる順に並べると,利息充当方式・利息非充当方式・無利息方式になります。貸金業者が返還額を少なくしたいので,無利息方式か利息非充当方式で計算しますが,裁判実務では,最も有利な利息充当方式が確立しています。
すべての専門家が,依頼者のために,裁判実務で認められる最も有利な利息充当方式を当然採用しているかと思えば,実際には違います。貸金業者側に有利な無利息方式・利息非充当方式で計算する専門家が多くいます。
そのため,採用する計算方法の違いにより,依頼する事務所により回収額に大きな差が出ます。 - 貸金業者側の見解に従うかの違い
不完全開示についての扱いや取引の個数(一連性),切替事案,不動産担保切替事案等の争点について,貸金業者は,その見解に従って過払金の有無・額を提示してきます。貸金業者の見解は,ほとんどの場合,貸金業者に都合の良い見解なので,貸金業者の見解に従った処理をすると過払金額は少なくなります。いわゆる,貸金業者の主張を争わない対応です。貸金業者の見解は,必ずしも裁判実務で認められるものではないため,根拠のない貸金業者の見解は,訴訟では否定されます。貸金業者の見解に安易に従わない対応をするかにより回収額に大きな差が出ます。
- 訴訟をするかしないかの違い
現在,主要貸金業者については,過払金元本tの返還日までの過払金利息の回収が可能です。ただし,ほとんどの貸金業者について,訴訟をすることが必要です。
また,訴訟をしないと貸金業者は,推定計算を認めない,一連計算を認めないなど,貸金業者側の主張に沿った和解しか応じないことが多いため,推定計算,取引分断など争点が有る取引について,十分な回収をしようとすると訴訟をして,裁判所に主張を認めてもらう必要があります。訴訟をしなければ,貸金業者の主張に沿った金額を基準とした回収に止まらざるを得ません。
そのため,積極的に訴訟を利用して回収する方針か,訴訟をしない方針かにより,回収額に大きな差が出ることになります。 - 和解基準の違い
事務所が何をもって全額(満額)と捉えているかにより回収額に大きな差が出ます(これは計算方法の違いとも関係します)。
最も多く回収額が多くなるのは,その事務所が,利息充当方式に基づく返還日までの元利金額をもって全額(満額)と捉え,その回収を目指す場合です。
これに対して,最も回収額が少なくなるのは,その事務所が,無利息方式又は利息非充当方式の元本額を全額(満額)と捉え,その額の回収を目指す場合です。あらかじめ広告等に「過払金利息は請求しない方針です」等と説明されている場合もありますが,説明がされていない場合が多いので,依頼する前に確認しておく必要があります。
基本的な姿勢がちがう
1件毎の回収率にこだわらず大量の事件を引き受けて短期に処理していくことで事務所の利益を重視するビジネス志向の事務所と1件毎の回収率にこだわり依頼者の利益を重視する事務所に大きく分けることができ,大量受任・短期処理のビジネス志向の事務所は1件毎の回収率にこだわらないため,法律上回収可能な額よりも相当少ない額での和解を勧める傾向にあります。
当事務所への相談事案で,CMを見て履歴開示を依頼した事務所から8万円の回収可能と説明され,当事務所へ切り替えた事案では,約55万円を回収していますが,その事務所が説明していた金額は貸金業者側に最も有利な計算による額だったことが判明しています。
(参考:事務所間の違い)